人材
個々の強みと成長を引き出す人材マネジメントへの変革
2023年度から2026年度の中期経営計画第2フェーズでは、「『舞台』を全員で創る」「経営基盤を『磨き上げる』」という全社戦略実現のため、要となる方策に「健康で意欲的に働ける環境を整える」「コーポレートガバナンスを『磨き上げる』」を据えました。人材戦略のテーマは、“健康経営の取り組み”“「自分らしさ」を発揮できる新人事制度の運用”“DI&Bの考え方の浸透”“将来の経営を担う多様な人材育成”です。2026年度に関連するKPIを達成すべく、成果につながるアクションを取り続けていきます。
2023年7月に施行した幹部職の新人事制度は、職務を起点とした幹部職人事制度を導入しました。各職務を人起点ではなく戦略起点で設計することで、社員にとっては職務遂行のための人材要件・キャリアが明確になり、自身のキャリア形成支援やリスキル支援につながります。経営・事業戦略視点では、必要な人材の過不足が量・質双方の観点で可視化されることにより中計実現に向けた適正人員の把握や人材ポートフォリオ構築の足掛かりとなります。また、今後どのような人材の採用・育成・異動配置に注力すべきかを明確にする経営戦略と連動した人材マネジメントが可能になると考えています。経営に資する人材戦略を展開することで、事業の全社戦略実現に貢献します。
従業員エンゲージメント調査を通じたエンゲージメント強化
当社では、「舞台」の出来栄えや状況をモニタリングするために「従業員エンゲージメント調査」を実施し、調査から判明した会社に対するコミットメントや自発的努力といった”社員の意欲”を表す指標である「社員エンゲージメント」と、自分のスキルや能力を活かせる働きやすい環境といった”職場の環境”を表す指標である「社員を活かす環境」を活用しています。当社が使う従業員エンゲージメント調査はグローバルに活用されているもので、好業績なグローバル企業や日本企業の平均値をベンチマークにすることができます。これにより感覚的に捉えがちであった組織の各種課題が、数値を持って捉えられるようになりました。
従業員エンゲージメント調査は2021年度から実施しており、2022年度の社員エンゲージメントは48%、社員を活かす環境は46%でした。調査から判明した組織の課題に対する改善計画の策定・実行・定着を支援するために、部門ワークショップを通じた職場での改善や、人材戦略の実行を通じて従業員エンゲージメントの強化を進めていきます。
2026年には社員エンゲージメントを56%、社員を活かす環境を55%にすることを目標としています。そして、2030年の社員エンゲージメントの目標値は世界好業績企業の平均値である75%とし、目標の達成を通じ、一人一人が強みを発揮できる『舞台』づくりを目指していきます。
女性活躍
少子高齢化により労働力人口の減少が進む中、当社が持続的に成長し続けるため、女性の活躍推進は不可欠です。部長・課長職を担える女性社員を増やし、その活躍の場の拡大を図っています。2023年3月末時点での女性社員比率は13.4%、女性管理職比率は5.7%です。2026年には女性管理職比率を12%にすることを目標としています。
当社では、WEPs(女性の経済的エンパワーメントを推進する国際的な7原則)の診断を2022年3月に実施したところ、女性管理職のロールモデルが少ないため通常より女性のキャリア構築について手厚く支援していく必要があることが分かりました。そのため、女性従業員への支援としてメンター制度とスポンサー制度の2つの制度の導入を進めています。
これらを中心として、将来の経営を担う多様な後継者育成計画のため、人材要件を議論し客観的な評価を行える仕組みを整え、プロセスを定期的に回していけるよう仕組みを構築していく計画です。
DI&Bの考え方を浸透させる
当社ではD&IにBelongingを加えたDI&Bを推進しています。多様性を尊重したうえで活かし(D&I)、誰もが受け入れられている安心感や信頼感を持っていること(Belonging)を目標として、トップダウンとボトムアップの両方から施策を行っています。
誰もが「ここで働いていてよかった。ここが私の居場所だ」と思えるようなDI&Bな組織風土づくりを推進していくことは、中期経営計画の「個々の強みを発揮できる『舞台』を全員で創る」プロセスそのものと考えています。
人事統括部門の中にDI&B推進室という専門の部署を設けていますが、それだけではなく、DI&Bの組織風土定着のため、社内公募の推進プロジェクトも発足しています。幅広く公募で募った年齢も性別も国籍も違うメンバーがさまざまなチームに散らばり「自分たちがゼオンのDI&B風土定着のためにやりたいこと」を実行に移して活動しています。
人事制度改定について
当社は2023年7月に幹部職人事制度改定を行い、幹部職向けに「職務」を起点とした人事制度を導入しています。旧制度では「人」の職務遂行能力に基づきマネジメント職へのステップアップを目指した等級・報酬運用をしていましたが、近年、社員に期待される役割(=職務)は多様化しています。
また、社員の意欲に応え、個々の強みを発揮できる「舞台」づくりには、一人ひとりの多様な強みと成長を引き出す人事制度への移行が不可欠と考え、今回の幹部職人事制度改定を行いました。
改定の狙いは以下の3点です。1つ目は、複線型の人事制度とすることで「期待される役割の重さ」に報いるためです。従来の役職を基準としたマネジメント職に、個別に職務に対する評価を行い等級設定するスペシャリスト職を加え、キャリアパスを明確にしつつ、職務の重さに応じたメリハリのある処遇を実現します。
2つ目は幹部職への昇格以降も成長を促すためです。職務ごとの評価項目などを設定し、発揮・観察された行動特性を評価する“行動評価(コンピテンシー評価)”を導入していくことで、評価の透明性の向上、成果の創出の喚起、長期的な育成の指針としての活用を狙っています。
3つ目は社員のキャリアの可視化につなげるためです。各職務の人材要件を明確にし、社員それぞれのキャリアパスの見える化や、経営戦略達成に必要な人材の過不足の見える化を実現し、成長を促すとともに今後どのような人材の獲得・育成・配置に注力すべきかなどの人事運営にも活用していきます。
幹部職の新しい人事制度を運用していく中で、経営・事業戦略達成のための適正人員確保に向けた人材ポートフォリオ構築を進めていきます。また、幹部職の各職務遂行のための人材要件が明確になることで、幹部職を目指す若手・中堅層の育成や先の見えるキャリアパスにつなげることを目指します。
2024年度以降には一般職の人事制度改定を予定しています。まず対話を通じて働き方・キャリア形成における課題を把握し、若手から自律的なキャリア形成の機会を支援するため検討を進めていきます。また、新しい幹部職人事制度を踏まえシニア社員制度にも職務の考え方を反映すべく、2024年度に制度改正を予定しています。