気候変動
基本的な考え方
パリ協定の採択以降、カーボンニュートラルに向けた取り組みは世界の共通課題として認識されており、その動きは現在さらに加速しています。
ゼオングループは、気候変動への対応を重要な社会課題の一つと捉え、カーボンニュートラルの実現を目指しています。気候変動は事業環境に大きな影響を及ぼしますが、当社はこれをリスクであると同時に、新たなビジネスチャンスを生み出す機会としても認識しています。
この考え方のもと、当社はTCFD提言に賛同し、TCFDフレームワークに基づく情報開示を行うとともに、経営戦略と統合した気候変動対応を推進しています。
また、国内・海外の各拠点において、気候変動やエネルギー使用量削減などに関する法律・規制および政策等を支持し、適切に対応しています。日本国内では、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)やエネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)などが該当します。
カーボンニュートラルマスタープラン
中期経営計画『STAGE30』において、「カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーを実現する「ものづくり」への転換を推進する」を掲げています。温室効果ガス(CO2)排出量(Scope1+2)の削減に関しては、2030年度までに全グループで42%削減(2020年度比)を目標としており、この目標はScience Based Targets (SBT) イニシアチブ認定を取得しています。

TCFD提言に基づく開示
ガバナンス
気候関連リスクおよび機会についての取締役会の監視体制
取締役会は、気候関連リスクおよび機会を含む重要なサステナビリティ課題について、経営からの定期的な報告を受け、その対応方針、進捗状況および有効性について監督しています。当社では、気候変動への対応状況を含むサステナビリティに関する重要事項について、サステナビリティ委員会および経営会議での審議・意思決定を経たうえで、「サステナビリティ報告」として年2回取締役会に報告しています。取締役会はこれらの報告に対して指摘・助言を行い、その内容はTCFD対応を含む各種施策に反映されています。これにより、気候関連リスクおよび機会への対応状況を継続的に監視しています。
気候関連リスクおよび機会の評価・管理における経営者の役割
経営者は、気候関連リスクおよび機会への対応を重要なサステナビリティ課題の一つとして位置づけ、代表取締役を議長とする経営会議において、対応方針および重要施策の審議・決定を行っています。また、サステナビリティ委員会において、TCFD等の枠組みに基づき、気候関連リスクおよび機会の特定・評価ならびに対応施策の検討・推進を行い、その内容を踏まえて経営会議において意思決定を行っています。これにより、経営者が気候関連リスクおよび機会の評価・管理プロセス全体に関与する体制としています。
戦略
組織が特定した短期・中期・長期の気候関連リスクおよび機会
当社では、サステナビリティ委員会およびその下部組織であるTCFD部会を中心に、気候変動が当社事業に及ぼす影響について、短期・中期・長期の視点から気候関連リスクおよび機会の特定・識別を行っています。
その過程として、2020年度にゴム事業部において2℃・4℃シナリオ(RCP2.6/8.5)分析を実施し、気候変動に伴なうリスクと機会を特定しました。2021年度には当該取り組みを全社に展開し、同様のシナリオ分析を通じて事業全体に対する影響を整理しました。さらに2023年度には1.5℃シナリオ分析を実施し、中長期的な移行リスクおよび機会について検討を行っています。加えて2024年度には、従来から分析対象としていた高岡工場、川崎工場、徳山工場、水島工場に加え、氷見二上工場・敦賀工場を含む全6工場を対象に、主として長期的な物理リスクを想定した4℃シナリオ(RCP8.5)に基づくリスクの特定・識別を実施しました。これらの分析結果を踏まえ、当社では、短期的には事業活動への直接的影響、中期的には事業構造や投資判断への影響、長期的には事業継続性および競争環境の変化といった観点から、気候関連リスクおよび機会を整理し、事業戦略の検討に活用しています。
- ※RCPとは、IPCCが示す温室効果ガス排出量に基づく気候変動予測シナリオ。RCP2.6は厳格な排出削減を前提とし、RCP8.5は現状の排出が継続された場合の高排出シナリオです。
気候関連リスクおよび機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響
- 事業インパクト評価
当社は、TCFDの枠組みに基づくシナリオ分析を通じて、気候変動が当社の事業および財務に及ぼす影響について検討しています。2020年度・2021年度のTCFD活動においては、4℃シナリオでは原材料調達コストの増加が、また2℃シナリオでは、原材料調達コストに加えて炭素税の導入が当社事業にとって相対的に大きなリスクとなる可能性があると認識しました。一方で気候変動への対応を背景とした自動車のEV化の加速によりエナジー材料分野を中心に、当社事業にとって重要な事業機会が生じる可能性があると認識しました。これらの認識を踏まえ2024年度には、中期経営計画第3フェーズの利益計画策定上重要なEVなどの自動車販売台数について前提条件を見直した上で、気候関連リスクおよび機会が当社事業に及ぼす影響について再評価を行いました。
- リスク重要度評価(リスクおよび機会の認識)
2024年度には、これまでのTCFD活動に加え、工場を中心とした事業拠点における気候変動に関するリスクおよび機会について改めて識別を行い、それらが当社の利益へ及ぼす影響について試算を行いました。当該試算結果については、気候変動リスクおよび機会の重要度を把握するための参考情報として活用しており、その概要を下表に示しています。
| 分類 | 項目 | 特定したリスク・機会 | 概要 | 対象事業部 | 発現時期 ※1 |
影響度 ※2 |
対応策、機会の取り込み |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 移行リスク (1.5℃) |
政策/規制 | 炭素税 | 炭素税導入による排出量への課税(国内外連結)※3 | 全 | 中~長期 | 大 | 省エネルギー、プロセス革新、エネルギー転換 |
| LCA、CFPの調査費用 | 規制強化により、LCA、CFP調査費用増大 | 全 | 短~長期 | 小 | 効率的なコスト低減策の検討 | ||
| 顧客行動の変化 | ICE減少、ゼロエミッション車普及率 | ゼロエミッション車の普及によるエンジン搭載車関連製品の売上減少 ※3 | エラストマー | 短~長期 | 大 | EV化に適用した用途開発、事業ポートフォリオ見直し | |
| 物理リスク (4℃) |
急性 | 洪水被害額(設備の被害) | 発災した場合の設備の被害額を試算 ※4 | 全 | 短~長期 | 大 | 防災施策やレジリエンス(災害対応力)の強化 |
| 洪水被害額(機会損失) | 発災した場合の機会損失(1か月停止想定)を試算 | 全 | 短~長期 | 中 | 防災施策やレジリエンス(災害対応力)の強化 | ||
| 慢性 | 渇水対応費用 | 他地域からの水転送によるコストアップ金額 ※5 | 全 | 短~長期 | 中 | 地域協議会での渇水対策検討、水リサイクル策検討 | |
| 機会 (1.5℃) |
政策/規制 | 炭素価格と炭素税 | CO2削減貢献につながる製品の販売機会の増加 | 全 | 中~長期 | 大 | バイオ原料の生産、活用や製品リサイクル |
| 各国の炭素排出目標/政策 | 再生可能エネルギー蓄電のための電池需要の増加 | エナジー材料 | 中~長期 | 大 | 蓄電池需要の拡大によるエナジー材料の拡販 | ||
| 業界/市場/技術 | 重要製品/製品価格の増減 | 原材料価格の下落 ※3 | 全 | 中~長期 | 大 | 原油価格の乱高下に対応した施策検討 | |
| エネルギー需要の変化 | 省エネTV普及による光学フィルム需要拡大 | 高機能部材 | 短~長期 | 中 | 省エネTV需要の増加に対応したフィルム開発 | ||
| パワー半導体需要増加による熱界面材料の販売機会の増加 | 高機能マテリアル | 中~長期 | 中 | パワー半導体需要増加に対応した熱界面材料の開発 | |||
| 低炭素技術の普及 | 電気自動車向け電池需要の増加 ※3 | エナジー材料 | 短~長期 | 大 | 電池需要の拡大によるエナジー材料の拡販 | ||
| 次世代技術の進展 | マテリアルリサイクル技術発展に伴う事業機会 | 高機能樹脂 | 中~長期 | 中 | リサイクル技術の確立 | ||
| 評判 | 顧客行動の変化 | リサイクル性の高い製品が顧客に優先的に採用 | 高機能マテリアル | 短~長期 | 大 | リサイクル樹脂によるプレミア価値の創出 | |
| 機会 (4℃) |
急性 | 激甚災害による操業へのダメージ | 甚大災害による販売機会の増加 | エナジー材料/高機能マテリアル | 短~長期 | 大 | 補修用テープの拡販、蓄電池の増産によるエナジー材料の拡販 |
| 慢性 | 平均気温の上昇 | 気温上昇に伴う販売増加 | 高機能マテリアル | 中~長期 | 大 | 天産品生産の減少に伴う代替製品拡販の取り込み | |
| 水ストレス | 干ばつなどによる天然ゴムの生産量低下 | エラストマー | 中~長期 | 中 | 天然ゴム生産の減少に伴う代替製品拡販の取り込み |
- ※1発現時期 短期:0~3年未満、中期:3年~10年未満、長期:10年~30年以上
- ※2影響度 大:50億円以上の利益へのインパクトの概算、中:10億~50億円の利益へのインパクトの概算、
小:10億円未満の利益へのインパクトの概算 - ※34℃シナリオについてはIEAのSTEPSシナリオを、1.5℃シナリオについてはIEAのNZEシナリオにおけるEV販売台数や原油価格、炭素税価格にてそれぞれ試算
- ※4国土交通省「重ねるハザードマップ」から、日本ゼオンの全6工場における想定最大規模降雨時(1000年に一度)の浸水深を調査し、その結果を国土交通省「治水経済調査マニュアル」にて被害率を試算し、実際に想定最大規模降雨が発災したベースにて被害想定額を算出
- ※5水使用量が多い高岡工場、川崎工場、徳山工場、水島工場において、渇水時に他地域から水を輸送した場合のコストを試算
2℃以下のシナリオを含む気候変動シナリオに基づく戦略のレジリエンス
当社は、2℃以下のシナリオを含む複数の気候変動シナリオを用いた検討を通じて、気候変動が当社の事業および戦略に及ぼす影響を確認するとともに、当社戦略のレジリエンスについて検討しています。
2024年3月には、温室効果ガス排出削減に関する科学的根拠に基づく目標としてSBT認定を取得し、1.5℃水準を目標とした取り組みを進めています。この目標設定の前提として、2023年度には全社的な体制のもとで1.5℃シナリオ分析を実施し、当該シナリオ下で特定・識別された気候関連リスクおよび機会について、対応の方向性を整理しました。これらの取り組みを通じて、当社は、2℃以下の気候変動シナリオを含む将来環境の変化を考慮したうえで、当社事業および戦略の持続性・強靭性を高めることを目指しています。
また、当社では、1.5℃のシナリオを含む気候変動シナリオに基づく検討において、事業戦略のみならず、工場やサプライチェーン、海外グループ企業における物理的影響についても重要な検討対象としています。近年の取り組みとしては、これらの拠点や供給網における物理的影響を整理したうえで、将来の気候変動による影響を踏まえ、当社事業および戦略の持続性・レジリエンスについて検討を行っています。
リスク管理
気候関連リスクを識別・評価するプロセス
当社ではTCFDの枠組みに基づき、4℃および1.5℃の気候変動シナリオを用いて、2030年およびそれ以降を想定した気候変動に伴う移行リスクおよび物理的リスクの特定・識別を行っています。特定したリスクについては、影響度や重要度の観点から評価・分類を行い、これらの内容について定期的にレビューを実施することで、気候関連リスクの把握および優先度の見直しを継続的に行っています。また2024年度には、従来分析対象としていた4工場に加え、新たに2工場を加えた事業拠点を対象に、移行リスクおよび物理リスクの特定・識別ならびに影響度評価を実施しました。
気候関連リスクを管理するプロセス
気候関連リスクについては、識別・評価の結果を踏まえ、重要なリスクを中心にサステナビリティ委員会において議論し、代表取締役を議長とする経営会議で審議・決定し、該当リスクに関係する部門において、発生頻度および事業への影響の程度を考慮しながら、リスクの低減および管理に向けた対応を進めています。これらのプロセスを通じて、気候関連リスクについて継続的なモニタリングを行い、事業運営への影響を適切に管理する体制としています。
気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスが、組織の総合的なリスク管理にどのように統合されているか
当社では、気候関連リスクを含む全社的なリスクについて、リスク管理委員会において把握・整理し、その結果を代表取締役を責任者とする経営会議に報告する体制としています。これらのリスクは取締役会に報告され、経営による監督のもとで管理されています。
2024年度には、TCFD部会において特定された気候変動リスク(猛暑による熱中症、水不足等)を全社的なリスク管理の枠組みに組み込み、他の経営リスクと統合的に評価しました。
また、2025年度には、気候変動に伴う物理的リスクについて、事業拠点、海外グループ企業およびサプライチェーンを対象とした評価を実施しており、当該評価は以下の通り、各対象においてスクリーニングおよび詳細評価を組み合わせた段階的なプロセスにより実施しています。
- 国内事業所
対象範囲:国内全事業拠点
スクリーニング:重ねるハザードマップを用い、計画規模降雨および想定最大規模洪水に基づくリスク評価を実施
詳細評価:リスクが相対的に高い拠点に対してヒアリングを実施し、設備配置、排水対策、BCP等の整備状況を確認
評価結果:一部拠点においてリスク要因が確認されたものの、既存対策により一定の対応が講じられていることを把握
今後の対応:現時点ではヒアリングベースの評価であるため、外部ツール等を活用した定量評価の導入により、評価精度の向上を検討 - 海外グループ企業
対象範囲:海外グループ企業全体
スクリーニング:各社による自己評価、Aqueduct (世界資源研究所(WRI)が提供する水リスク評価ツール)等の外部ツールによる水リスク評価、過去の発災履歴等を踏まえ、リスクの優先度を整理
詳細評価:リスクが相対的に高いと判断された拠点を対象にヒアリングを実施
ヒアリング内容:洪水・浸水対策、BCP、代替生産・供給体制等
評価結果:対象拠点において一定のリスク低減策が講じられていることを確認し、現時点で重大な事業影響が想定されるリスクは限定的と評価 - サプライチェーン
対象範囲:主原料および特殊原料の主要サプライヤー(取引額上位)
スクリーニング:国内は重ねるハザードマップ、海外はAqueductを用いて、拠点ごとの物理リスクを評価
詳細評価:リスクが相対的に高いサプライヤーに対してヒアリングを実施
ヒアリング内容:設備対策、洪水時の操業継続対応、代替供給の可否等
評価結果:一部にリスクが認められたものの、既存対策により供給への影響は限定的であることを確認
これらの評価結果については、全社的なリスク管理の枠組みの中で整理・評価を行い、他の経営上のリスクと併せて統合的に管理しています。当社は、気候関連リスクを事業運営の一部として捉え、継続的なモニタリングおよび見直しを行っています。
指標と目標
GHG排出量
当社は、2022年4月に第1次カーボンニュートラルマスタープランを策定しました。同プランでは、2030年度における日本ゼオン単体のScope1+2のCO2排出量を、2019年度比で50%削減することを目標としています。Scope1・2の削減方策として、①省エネルギー、②プロセス革新、③エネルギー転換の3つのアプローチを採用しています。
さらに2023年度には、当社グループ全体でScope1+2、およびScope3の削減目標を以下の通り設定しました。
| 項目 | 基準年 | 目標年 | 削減目標 |
|---|---|---|---|
| Scope1,2 | 2020 | 2030 | 42%減(1.5℃水準) |
| Scope3 | 25%減(WB2.0℃水準) |
2024年3月にはSBT認定を取得し、グループ全体の目標を2023年度に設定した上記表の削減目標に一本化しました。なお、GHG排出量の算定方法は、GHGプロトコルに準拠しています。

- ※GHG排出量の算定は、GHGプロトコルに定める組織境界およびScope区分に準拠しています。
- ※Scope1排出量については、温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(SHK制度)で定められた排出係数を使用しています。
- ※Scope2排出量については、GHGプロトコルに基づくMarket-based methodにより算定しており、再生可能エネルギーメニューの利用、非化石証書およびグリーン熱証書等の環境価値を反映しています。
- ※Scope3排出量については、環境省「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出量等の算定のための排出原単位データベース」を用いて算定しています。
報酬制度
当社は、2023年度より取締役および執行役員を対象に業績連動型株式報酬制度を導入しました。報酬の算定にあたっては、中期経営計画各フェーズの最終年度の目標値と連動する財務指標および非財務指標(ESG関連指標を含む)を評価指標としています。
主要な取り組み
CO2排出削減の取り組み
国内工場のエネルギー転換を実施
国内4事業所(高岡工場、氷見二上工場、敦賀工場、徳山工場)において、購入電力を実質的に再生可能エネルギー由来とみなされる電力※に転換しました。
さらに高岡工場では、CO2排出量が実質ゼロのカーボンニュートラルLNGの購入契約を締結しています。
徳山と川崎工場では、蒸気のCO2排出量を削減するため、グリーン熱証書の購入契約を結びました。
また、川崎工場では、東京ガス株式会社のカーボンオフセット都市ガスを導入するとともに、カーボンオフセット都市ガスバイヤーズアライアンスにも加盟しています。
- ※100%再生可能エネルギー電力、または非化石証書を活用した電力(再生可能エネルギー由来および非化石電源を含む)

炭素資源循環型の合成ゴム基幹化学品製造技術の開発
使用済みタイヤやバイオマスなどの再生可能炭素資源を原料として、合成ゴムの基幹化学品であるブタジエンおよびイソプレンを高効率に製造する技術の開発に取り組んでいます。化石資源への依存低減と資源循環の高度化を通じて、カーボンニュートラルの実現に貢献する取り組みであり、2030年代の社会実装を目指しています。
2025年2月には、植物由来などのエタノールから高効率でブタジエンを生成する技術について、ベンチ設備の導入を決定しました。現在、社会実装に向けた技術検証とスケールアップを進めています。
なお、本取り組みは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業に採択されています。
物流におけるCO2排出量削減の取り組み
当社は、改正省エネ法に基づく特定荷主として、物流分野におけるCO2排出量削減を重要な環境課題と位置づけ、製品および原材料の輸送に関わる協力会社と連携し、エネルギー使用の合理化に取り組んでいます。
具体的には、積載効率の向上、輸送ルート・回数の見直し、鉄道・船舶へのモーダルシフトなど、輸送プロセス全体の最適化を進めています。これらの取り組みは2022年度より本格的に開始し、国内輸送全体におけるCO2排出量を13%削減しました(当社試算)。
今後も、環境負荷低減と物流の効率化・安定化を両立させる取り組みを継続し、持続可能な物流体制の構築を目指していきます。
高機能樹脂ペレットの工場間輸送
物流に伴うCO2排出量の削減を重要な環境課題と位置づけ、山九株式会社および伏木海陸運送株式会社と連携し、水島工場(岡山県倉敷市)から氷見二上工場(富山県氷見市)までの高機能樹脂ペレット輸送において、輸送スキームの抜本的な見直しに取り組みました。
従来はタンクローリーによる長距離陸上輸送を行っていましたが、本取り組みでは荷姿を20フィートコンテナへ変更するとともに、鉄道による幹線輸送へ切り替えるモーダルシフトを実施しました。これにより輸送効率が向上し、幹線輸送におけるCO2排出量を改良トンキロ法ベースで約62%削減しました。さらに、積載効率は約40%向上し、長距離運転の削減によってドライバーの労働時間も約68%削減するなど、環境負荷低減と労働環境改善を同時に実現しています。
また、BCP対応力の向上を目的に、水島工場近隣および氷見(伏木港)にコンテナストックポイント(SP)を設置し、輸送の平準化と安定的かつ効率的な物流体制を構築しました。コンテナストック型輸送への移行に伴う誤出荷リスクに対しては、QRコードとOCR技術を活用したデジタル管理を導入し、誤出荷防止やトレーサビリティの強化を図っています。
本取り組みは、一般社団法人日本物流団体連合会が主催する「第1回日本物流大賞」において、「奨励賞」を受賞しました。パートナー企業との協業により実現した、CO2排出量削減に資する持続可能な物流モデルの一例です。

インターナルカーボンプライシング制度(ICP制度)の導入
- 1社内炭素価格:10,000円/t-CO2
- 2制度対象:CO2排出量の増減を伴う設備投資
- 3適用方法:対象となる設備投資計画に伴うCO2排出量の増加/削減の影響を、社内炭素価格の適用により金額換算したものを投資判断の参考とする
GHG削減貢献量および削減実績量の算定
日本ゼオンは、自社の事業活動に伴う温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG)排出削減に着実に取り組むとともに、化学製品・ソリューションの提供を通じて、社会全体のGHG排出削減に貢献することを重要なサステナビリティ課題として位置づけています。
脱炭素社会の実現に向けては、企業自らの排出削減に加え、製品・サービスが顧客や社会の排出構造そのものに変化をもたらすことによる「社会への削減効果」を可視化し、適切に評価・発信していくことが重要であると考えています。この考え方のもと、当社は製品・サービスを通じた環境価値の創出を経営課題の一つとして捉え、取り組みを進めています。
こうした背景を踏まえ、日本ゼオンは、従来のGHGインベントリによる排出量管理とは明確に区別した指標として、製品・サービスを通じたGHG削減貢献量(社会全体で回避・抑制された排出量)およびGHG削減実績量(自社の排出削減実績)の算定・開示に向けた取り組みを開始しました。
本取り組みを通じて、自社の脱炭素に向けた取り組みと事業価値の創出、ならびに社会全体の温室効果ガス削減への貢献を一体的に示し、ステークホルダーとの建設的な対話を進めていくことを目指します。
算定対象製品
初期段階として、当社SDGs貢献製品認定制度にて認定された、以下の2製品を対象にGHG削減貢献量の算定を実施しました。これらの製品は、お客様の製造プロセスや製品性能の向上を通じ、従来技術と比較してGHG排出削減に寄与する可能性を有しています。
| 対象製品 | 製品概要 |
|---|---|
| 特殊溶剤 シクロペンタノン(Cyclopentanone) | シクロペンタノン(Cyclopentanone)は、半導体製造工程において現像および洗浄用途に使用される特殊溶剤です。回収・再利用が容易な特性を有しており、使用後のリサイクルを通じて、資源投入量および廃棄量の削減に寄与するとともに、ライフサイクル全体におけるGHG排出量の削減にも貢献しています。 |
| 光学フィルムZeonorFilm® e-ZBシリーズ | e-ZBシリーズは、液晶テレビの偏光板に用いられる高機能フィルムです。高透過型偏光板に採用されており、画質を維持しながらバックライトの消費電力を抑えることで、テレビ使用時の省エネルギー化に貢献しています。さらに、製造工程における材料使用量および廃棄物の削減を通じて、ライフサイクル全体でのGHG排出量の削減にも寄与しています。 |
指標の定義
当社は、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを適切に可視化するため、以下の2つの指標を区別して管理・開示することで、製品・サービスを通じた社会への貢献と、自社の脱炭素に向けた取り組みを明確に示すことを目指しています。
削減貢献量
当社の製品・サービスが導入されることで、導入前または従来製品との比較において、社会全体のGHG排出量がどの程度回避・抑制されたかを示す指標です。自社の事業活動に伴う排出量(GHGインベントリ)とは区別し、製品・サービスを通じて社会のGHG排出削減に寄与した効果を表します。

削減実績量
省エネルギー設備の導入、原料転換、生産プロセスの改善などの脱炭素投資を通じて、当社自身の事業活動において実際に削減されたGHG排出量(実績)を示す指標です。主として原料調達から当社からの製品出荷までにおける排出削減の取り組みの成果を定量的に把握・管理するために用いています。
算定方法
製品・用途ごとに、以下のような一定の前提条件を設定しています。また、算定に際しては、国立研究開発法人産業技術総合研究所が提供するLCA(ライフサイクルアセスメント)データベース「IDEA」をはじめとする外部データベースを活用しています。
- 比較対象となるベースライン(従来技術・従来製品)
- 当社製品・サービスがGHG排出削減に寄与する割合
不確実性について
算定に際しては、製品の使用条件や供給先、関連データの入手状況などの多様性を踏まえ、一定の前提や仮定を置いた評価を行っている部分があります。そのため、本算定結果には一定の不確実性が含まれており、実際の削減効果を厳密に示すものではありません。また、当社が開示した数値は特定の条件下において合理性を有するものとして算定した参考情報であり、他社との単純な比較を目的としたものではありません。
今後も算定手法やデータの精度向上に努め、より信頼性の高い情報開示を目指していきます。
算定結果
対象の製品における算定結果は以下の通りです。
| 単位(Ton-CO₂e) | 2020年度 | 2024年度 |
|---|---|---|
| 削減貢献量 | 862,830 | 6,981,666 |
| 削減実績量 | 3,098 | 865,929 |

- ※図に示す通り、2024年度の削減貢献量は、2020年度と比較して大きく増加しています。これは、高機能フィルムであるe-ZBシリーズによる寄与が主な要因です。e-ZBシリーズの削減貢献量は、中国におけるテレビ関連の環境規格(中国国家規格GB 24850-2020)に定められた数値を基準とし、当該規格を満足するためにはe-ZBシリーズの採用が必要であるという前提のもとで算定しています。加えて、近年のe-ZBシリーズの生産量および供給量の拡大も、削減貢献量の増加に影響しています。
外部有識者によるレビュー体制
日本ゼオンでは、削減貢献量算定の妥当性および透明性の向上を目的として、外部有識者で構成される「削減貢献量レビューパネル」を実施しました。本パネルでは、ISO 14067:2018に準拠したカーボンフットプリント(CFP)の算定ならびに、日本LCA学会「削減貢献量算定ガイドライン」に沿った削減貢献量の算定について、その考え方や前提条件の適切性が確認されました。各製品の担当者が算定内容を説明し、ベースラインの設定、算定ロジック、データの取り扱い等について専門的な助言を受けています。当社は、これらのコメントを踏まえて削減貢献量の算定を行っています。今後も、こうした知見を活かしながら、算定手法および社内プロセスの継続的な改善に取り組んでいきます。
| 委員長 | 稲葉 敦 様 | 一般社団法人日本LCA推進機構 理事長 |
|---|---|---|
| 委員 | 本下 晶晴 様 | 国立開発研究法人 産業技術総合研究所 ネイチャーポジティブ技術実装研究センター |
| 委員 | 佐伯 順子 様 | 一般社団法人 産業環境管理協会 |

今後の方針
当社は、自社事業におけるGHG排出削減の着実な推進に加え、製品・サービスを通じてお客様や社会全体のGHG削減に貢献することを、重要なサステナビリティ戦略の一つとして位置づけています。今後は、削減貢献量の算定手法の高度化やデータの精緻化を継続するとともに、外部有識者の知見も活用しながら、算定プロセスの妥当性・透明性の向上に取り組んでいきます。併せて、削減貢献の考え方や算定結果について、ステークホルダーにとって分かりやすく、信頼性の高い情報開示を進め、社会全体の脱炭素化への貢献をより一層高めてまいります。
GXフューチャー・コンソーシアムへの参画

当社は、2026年4月に発足したGXフューチャー・コンソーシアム(以下、GXFC)に参画しています。
GXFCは、GX(グリーントランスフォーメーション)に関する需要創出や円滑な資金供給、ルール形成等を一体的に推進する官民連携プラットフォームです。
当社は、GXFCを通じて行われるGXリテラシーの向上、GXの社会実装を牽引する活動に参加し、脱炭素と経済成長の好循環への貢献を目指します。
