社会

人材育成

基本的な考え方

当社では「ありたい人材」を『高い目標に向かって、自ら考え抜いて行動し、変え続けられる人材』と定義しています。社員一人ひとりが目標となる「ありたい人材」像を描き、現状とのギャップを認識して埋めていくことで、日々の具体的な行動につなげられるよう、教育・訓練の仕組みを見直しています。その行動を通じて達成された成果を公正に評価し、処遇に反映することで、さらに高いレベルを目指す人材を育成することを目的としています。

人材育成のイメージ
人材育成のイメージ

体制・システム

人材育成については、経営理念の理解や協働するマインドの醸成、共通知識の習得を中心とする基本教育を実施しています。加えて、それぞれの仕事に必要な能力の開発・向上を目的とした職種別専門教育や、評価者のスキル強化を目的とした評価者研修、職場での実施を通じたOJTなど、階層に応じた教育を実施しています。

職種別専門教育の一例に、「安定的かつ安全な生産を徹底的に追及する生産革新活動」を支える人材育成を目的とした「ものづくり研修」があります。これは製造現場で働く入社後1~3年目までのオペレーターを対象とし、「工場のルール」「プラント運転の基礎知識」などの各製造現場共通の知識や技能の実技訓練を行い、ゼオンのものづくりに必要な技術の伝承や安全教育も含めた現場教育の充実を図っています。

また、自己啓発支援としては、社員一人ひとりが自らのありたい姿に近づくため自発的に学ぶことを後押しし、資格取得に関する費用の支援など、個々のニーズに応じた学習支援に取り組んでいます。

自己啓発支援の一環には通信教育奨励金があり、講座の修了条件を満たした場合には、受講料の100%を支給しています。

教育訓練体系図
教育訓練体系図

主要な取り組み

社員の成長と意欲を引き出す人材マネジメントの推進

舞台を全員で創る

当社が求める人材像は「高い目標に向かって、自ら考え抜いて行動し、変え続けられる人材」です。そうした人材をさらに確保し、育成していくために「社員一人ひとりの能力を引き出し、育成し、活用する」組織づくりや環境づくりを進めています。「心からワクワクできる会社の実現」をはじめとする当社のマテリアティ(ゼオンを動かす5つの歯車)の実現に向けて、引き続き個々の強みを発揮できる「舞台」づくりを進めていきます。

中期経営計画第3フェーズにおける「個々の強みを発揮できる『舞台』づくり」の全体像およびKPI
心からワクワクできる会社の実現を基軸とした人材戦略の全体像

「個々の強みを発揮できる『舞台』づくり」の全体像は、①社員の成長と意欲を引き出す人材マネジメントの推進、②経営戦略と人材戦略の連動強化、③働きやすくキャリアを断絶させない職場環境の整備です。2028年度までのKPIを設定し、達成に向けて図中に示すようなアクションに取り組んでいきます。

従業員エンゲージメント調査を通じた課題の可視化

当社では、マテリアリティの実現に向けて課題を可視化し、人材戦略の打ち手につなげることを目的に、2021年度より毎年「エンゲージメント調査」を実施しています。本調査では、従業員と会社の相互信頼を測る「従業員エンゲージメント」と、個人の能力を発揮し活かせる組織の状況を測る「従業員を活かす環境」の2つの結果系項目を中心に評価を行い、従業員と組織の能力をともに最大化させ、双方の成長につなげる施策を検討・展開しています。

当社が実施するエンゲージメント調査は、グローバルに活用されているもので、好業績のグローバル企業や日系企業の平均値をベンチマークにしています。これにより、これまで感覚的に捉えがちであった組織の各種課題を、より客観的に可視化できるようになりました。

2024年度の結果は、従業員エンゲージメントが52%、従業員を活かす環境が51%となり、いずれも前年度の結果と同水準でした。2030年度の目標値である75%達成に向け、従業員が「求められる以上のことをやろう」と思えるような、より前向きな後押しが継続的に必要であると考えています。そのためのカギである、人事制度改革を核とした「人材マネジメント変革」を進めていきます。

エンゲージメント調査項目の推移
エンゲージメント調査項目の推移

「自分らしさ」を発揮できる人事制度を運用する・幹部職新人事制度

当社は2023年7月に幹部職の人事制度を改定し、「職務」を起点とした新人事制度を導入しています。旧制度では「人」の職務遂行能力に基づき、マネジメント職へのステップアップを目指した等級・報酬の運用を行っていました。しかしながら、社員に期待される役割(=職務)が多様化する中、社員の意欲に応え、「個々の強みを発揮できる『舞台』づくり」には、一人ひとりの多様な強みと成長を引き出す人事制度への転換が不可欠と考え、制度改定を行いました。

まずは、従来の職能資格制度も残しながらハイブリッド型の運用を行いながら、経営・事業戦略達成に向けた適正人員の確保を目的として、人材ポートフォリオの構築や、幹部職に求められる職務要件の明確化を進めています。これらを踏まえた等級体系の整備を行った上で、2025年度には職能資格を完全に廃止し、当社に最適な人事制度を検討し導入を予定しています。

また、2025年度以降には、一般職を対象とした人事制度の改定を予定しています。まずは対話を通じて、働き方やキャリア形成における課題を把握し、若手社員の自律的なキャリア形成の機会を支援するため、制度の検討を進めていきます。

人事制度改定の方向性
人事制度改定の方向性

労働協約と労使の対話

企業発展に向けた労使共同宣言 (2009年)
  1. 1労使関係は、相互理解と信頼を基本とする
  2. 2誇れる会社づくりと企業基盤強化に向け、互いの役割を着実に実行する
  3. 3労使は良きパートナーとして、企業風土の改革と定着を目指す
中央労使協議会の様子
中央労使協議会の様子

日本ゼオン(株)と日本ゼオン労働組合は、両者間の平和を維持し、事業の健全な発展と組合員の労働条件の維持改善に協力することを目的として、労働協約を締結しています。労働協定には、組合活動・労使交渉・苦情処理のルール、賃金・労働時間などの労働条件を定めています。

企業の発展に向けた施策を確実に展開していくためには、会社と労働組合が相互に協力し、ゼオングループ全員の力を結集して、積極的に取り組んでいかなければならないとの労使共通認識に立ち、「企業発展に向けた労使共同宣言」を締結しています。

また、経営層との懇談会を定例化しているほか、労使協議会・懇談会、レスポンシブル・ケア(RC)対話、労使合同パトロールなど、さまざまな意見交換の場を設けています。労使協議会では、厳しい議論が交わされる場面も多々ありますが、労使の信頼関係のもと、双方にとって切磋琢磨しながら前向きな取り組みへとつなげています。

今後も引き続き、労働組合との対話の機会を積極的に設け、労使が互いの立場を尊重しつつ、良きパートナーとして「『働く誇り』を感じるゼオン」の実現に向けて、さまざまな施策に取り組んでいきます。

女性活躍推進

当社は多様な人材が個々の強みを発揮して活躍できる会社を目指し、女性の活躍を支援する取り組みを進めています。

女性社員数が絶対的に少ないことを課題として捉え、女性の採用拡大に積極的に取り組んできました。具体的には、大学卒業以上の新卒採用において、事務系で女性比率50%以上、技術系で30%以上を目標に設定し、採用活動を推進しています。こうした取り組みの結果、女性社員数は10年前と比較して2.2倍、全体に占める比率は9.8%から13.8%に増加しました。

管理職に占める女性比率は2025年3月末時点で6.4%に留まっていますが、こうした女性社員のすそ野の広がりが、将来的な女性管理職の増加につながっていくと考え、その実現に向けた取り組みを強化しています。

2023年7月には、幹部職の人事制度を一新し、管理職ポジションの職務と人材要件をより明確にしました。今後は、登用に向けた人材要件やギャップを確認し、管理職候補者人材プールの整備を行うとともに、スポンサーシップ制度などを通じて、女性管理職・女性管理職候補者層への支援を強化していきます。

女性管理職比率と人数(単体)
女性管理職比率と人数(単体)

経営戦略と人材戦略の連動強化

2023年7月に導入した「職務型人事制度」により、従来「人」に紐つきがちであった幹部職の職務を戦略起点で見直し、明確化を進めています。また、人材要件の言語化と行動特性情報の蓄積により、次世代経営人材・幹部職人材パイプラインを整備しています。これらにより事業戦略を牽引する人材を戦略的・機動的に配置していく能力を高め、経営戦略の実現に向けた組織能力の向上を図っていきます。

働きやすくキャリアを断絶させない職場環境の整備

DI&Bの考え方を浸透させる

当社ではD&Iに「Belonging」を加えた「DI&B 」を推進しています。多様性を尊重し活かす(D&Iとともに)、誰もが受け入れられている安心感や信頼感を持える状態(Belonging)を目標に、さまざまな施策を実施しています。これは、ゼオンのマテリアリティである「心からワクワクできる会社の実現」にもつながるものであり、社員が動く原動力にもなっています。

誰もが「ここで働いていてよかった。ここが私の居場所だ」と思えるような、DI&Bに根差した組織風土の醸成は、中期経営計画の「(個々の強みを発揮できる)『舞台』を全員で創る」プロセスそのものです。今後は多様性を変革の推進力に変え、イノベーションの創出にもつなげていきます。

推進体制としては、人事統括部門内に推進部署を設けるとともに、「DI&B推進プロジェクト」を組織横断的に展開し、トップダウンとボトムアップの両方から施策を行っています。特にDI&B推進プロジェクトでは、プロジェクトメンバーが自ら取り組みたいDI&Bに関する課題に主体的に取り組みながら、多様性を活かすリーダーとして成長するための教育も行っており、チェンジエージェントの育成にも取り組んでいます。

DI&B の取り組み実績
取り組み 内容
心理的安全性に関する教育 心理的安全性理解のためのワークショップ(経営~部門長レベル、管理職層)、社内報記事の掲載、講演会、コミュニケーション研修等
DI&Bに関する教育 DI&Bカルチャーリーダーシッププログラム、アンコンシャスバイアス研修、セルフリーダーシップ研修、1on1導入研修
社内広報(専用WEBサイト) 心理的安全性教育記事、上司向けの産休育休対応記事、その他DI&Bの取り組み紹介
DI&B推進プロジェクト 社内各部門から集まったメンバーで、リーダーシップ教育を受けながらDI&Bの課題に取り組む
シニア活動推進 ミドルシニア向けのキャリアデザイン講演会
社員同士がつながる仕組みの展開 つなサポ(つながるサポート)ルーム、中途採用者インクルージョン交流会、日本以外出身社員の交流会、子育てパパの交流会等
子育て支援 子育て社員とそれに関わる人の相互理解ワークショップ
中途採用者支援 事業所見学会、対話会
働き方改革 働き方改革に関する講演会
キャリアづくり 社員がキャリアを考える機会の提供・ゲーム要素を用いた研修
DI&Bウィークの実施 DI&Bをゼオンの全員が理解し、DI&Bでゼオンがつながることを目標とした全社キャンペーン週間。DI&Bプロジェクトメンバーが企画・運営を行う
経営との対話会 DI&B推進プロジェクトの報告会および対話会を通し、相互理解を深める

新卒採用、キャリア・中途採用

2024年度は、中途・キャリア採用として57名を採用し、その内訳は研究開発、事業、デジタルなど、多岐にわたります。こうした人材を積極的に管理職に登用することで、多様な考えをもつ組織づくりを進めています。

新卒採用では、2024年度は98名を採用しました。本社採用では、女性活躍推進の観点から、女性採用比率30%以上の維持・向上を図っており、将来的に経営の意思決定に関わる中核人材として活躍する女性社員が着実に増加しています。

近年の積極的な採用活動により人員が大幅に増加する中、入社者がしっかりと定着し、いかんなく個々の能力を発揮し活躍できるよう、双方向の対話を軸に、生活基盤支援、社内独自教育、人間関係構築支援などのオンボーディング施策の実施と仕組み化に注力しています。

特に入社間もない中途社員に対しては、人事がざっくばらんに話せる場を設定し、当社の生産活動に対する理解を深めるとともに、全社を俯瞰して業務に取り組めるよう支援する教育を実施しています。さらに2024年度からは個別面談も取り入れ、定着と早期の戦力化に向けた支援を行っています。

採用数(単体)
採用数(単体)

障がい者雇用の推進

「ゼオンふぁーむ徳山」にて
「ゼオンふぁーむ徳山」にて

当社は化学メーカーとして、危険物や回転機器などを取り扱う研究所や工場において、安全に配慮しながら障がい者雇用を進めています。

また、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を提供する場として、2020年10月からは障がい者就労施設「ゼオンふぁーむ」を千葉県柏市に、2022年9月からは「ゼオンふぁーむ徳山」を山口県周南市に開園しました。大阪府枚方市にあるふぁーむと合わせた3拠点で、積極的にディーセント・ワークの機会を提供しています。

各ふぁーむで栽培・収穫された野菜は、本社・研究所・工場への発送のほか、単身赴任者への定期発送による健康支援や、子ども食堂への寄付を通じて、健康経営と地域貢献活動にも寄与しています。これらの活動は障がいのある方を中心として行われています。

障がい者雇用状況
障がい者雇用状況

外国籍社員の活躍

グローバルでの事業展開に伴い、日本人社員のみならず外国籍社員の活躍も、当社にとって非常に重要となっています。外国籍社員がさまざまな部門で活躍することで、本人のみならず周りの日本人社員の成長にもつながり、多様な価値観の尊重や組織全体の活性化を促します。

当社では、以前より国籍を問わず、日本国外からも含め多国籍な採用を継続的に進めています。2025年3月時点では34名の外国籍社員が在籍し、過去から比較しても増加傾向にあります。その内7名は管理職として活躍しています。

今後も経営の意思決定に関わる中核人材となる外国籍社員を増やしていく方針です。

グローバルで活躍する社員

当社では、世界中の地域で海外駐在員が活躍しています。2025年3月時点では45名の海外駐在員がおり、アジア圏を中心に、北米や欧州などで当社の海外事業を推進しています。

海外駐在員が安全に仕事や生活ができるよう支援するのはもちろん、それぞれの海外駐在に求められる役割や職務、社員の成長を見据えたキャリアビジョンの明確化を図るとともに、社員が自らが手を挙げられるような、安心して挑戦できる環境づくりを進めていきます。

シニア社員の活躍について

当社は定年後60歳以上の社員を対象としたシニア社員制度を整備しています。2025年3月時点で、シニア社員は203名(グループ企業への出向者を含む)が在籍し、海外駐在を含め、多くの舞台で活躍しています。

本制度のコンセプトは、『人生100年時代に向け、シニア世代を迎えた・迎える社員の皆さんに、これまで以上に長きにわたり個々の強みを発揮できる舞台(職場)を創る』ことです。

本制度導入により、満70歳までの再雇用の枠組みを整備するとともに、魅力ある処遇と、パートタイム勤務や副業を含めた柔軟な働き方によって、より多くの人生の選択肢と安心して働ける環境を提供し、定年後の活躍意欲・挑戦意欲に応えていきます。

シニア社員制度の概要
再雇用期間 70 歳まで
コース区分 役割・磨き上げた能力の発揮をより反映したコース区分
処遇等
  • 役割・能力に応じた魅力ある処遇
  • 「マイスター称号」の活用
社内広報(専用WEBサイト)
  • フルタイムor パートタイム選択可
  • 一定条件のもとでの副業許可
  • サポート休暇活用

表彰制度「ZEON Challenge Award」

「ZEON Challenge Award」は、「企業価値向上への貢献」と「挑戦」を体現した社員に対して授与される年間表彰です。社長賞をはじめ、成果の度合いに応じた各賞が贈られます。

また、部門長が毎月個人を表彰する月間表彰と併せて、社員の自発的な挑戦に応え、個々の強みを発揮できる「舞台」を用意しています。